第2章 ハルハウララ
分厚い扉の先は、初めて聞く音であふれていた。
靴が床にこすれてきゅっと鳴る音、色々な人たちの掛声、ボールが手に当たるときの少し鈍い音…
「これ…バレーボール?」
「そうよ」
お母さんは行き先を知っていたようで、にっこりと返答する。
バレーをしていた人たちの中の一人がこちらに気づき、「集合!」と一層大きく声を張った。
途端、男の子たちがぞろぞろとやってくる。
この人たちみんな高校生…?ということは私と同年代の人なわけだ。未だに同年代の人と会うのは緊張する。
「小夜!?」
よく知っている声で名前を呼ばれた。声のした方を向くと、なんと田中さんがいた。
「た、田中さん…!?お母さん、これって…」
「小夜、これから先生が話してくださるから…武田先生、お願いします」
「はい、わかりました」
武田先生と呼ばれた緑ジャージの先生は部員たちを座らせ、軽く咳払いをした。
「えー、まず彼女の紹介からしましょうか」
先生はそう言いながらお母さんへ手の平を向けた。
「こちらは朝比奈芙弓さん、数年前まで烏野の養護教諭をしていらしました。今は近くでパン屋さんを経営されています。ボヌール…烏野生の間ではポピュラーなお店ですよね」
ボヌールの名前が出ると、何人かから「ああ…」という小さな声が漏れるのが分かった。そんなに有名だったんだ。
「そしてこちらが娘さんの小夜さん」
と、先生がくるりと私の方へ手の平を向けた。
「彼女はお体の都合でがあって学校に通っていません。もちろんウチの生徒でもありません…お歳が今年16になるということなので、日向くんたちと同い年ということになりますね」
部員さんの中から「へえーっ」という、少し高くてハスキーな声が聞こえた。きっと今のが日向くんだろう。
「さて、本題に入りましょう。お母様と相談したのですが、小夜さんには…」
何、この意味深な溜めは。どきどきしてしまう。
先生はわざと一呼吸おいてから、再び口を開いた。
「明日から特例でウチの生徒になってもらいます!」
「へあ」
思考が追い付かなくて変な声が出てしまった。
ゆっくりお母さんを見る。
「生徒…?」
「そう、生徒」
お母さんはいつものように穏やかに、にっこりと微笑んだ。