第2章 ハルハウララ
4月上旬の午後5時。私はミルクティーを飲みつつのんびりと本を読んでいた。
遮光カーテンを閉めているから詳しい天気は分からないけれど、カーテンの色の透け具合からなんとなく晴れているのは推測できる。
私の体が紫外線に弱くないものだったら、こういう時期はお花見というものをするというのをこの間お母さんに聞いた。
宮城の冬は厳しく、桜はまだ満開ではない。けどもう少ししたらお母さんたちも桜を愛でに行くのだろう。
私も、日の下に立てたら…
少ししょんぼりしていると、ぴこん、とパソコンから軽い電子音がした。
私が家にいて起きているときはパソコンを常に起動しているのだけれど、メールが来たときにはきちんと気が付けるように通知音が鳴るように設定している。
「田中さんからかな?」
4月頭の一件以来、私の生活にはささやかながらも自分にとっては大きな変化があった。
それまで家族と栞那さん、それから病院の先生としか会話したことのなかったけれど、今月に入ってから田中さんとメールや直接お話をするようになった。
世間知らずな私に色々なことを教えてくれて、一緒にいてすごく楽しいし、落ち着く。
受信ボックスを開き、未開封のものに簡単に目を通していき、最後に先ほど届いたものを読んだ。
「あれ、お母さんからだった。なんだろ…」
『起きてるかな?
さっきお仕事が終わりました。
日が暮れたら小夜と一緒に行くところが
あるから、出かける支度をしておいてね』
「出かける…?」
一瞬病院かと思ったけれど、カレンダーを確認して違うことが分かった。長い間定期的に通院しているし、毎回次の予約日に丸を付けているから間違いない。
「まさかお母さんが間違えるわけないしなあ…買い物とかかな?」
『お疲れ様。
分かった、支度してます』
と返信し、私はぬるくなってしまったミルクティーを飲み干し、もそもそと支度を始めた。