第2章 ノース・シー(真琴)
近況報告や父の生前の話などをひとしきりした私たちは、一緒に私の実家のある海辺へ歩いていた。
夜の帳はすっかり落ち、月明かりに照らされた海面が静かにうねる。
実家が近づくにつれてお互い言葉数が減り、沈黙となってしまった。
しかも隣を歩いていたはずの真琴はどんどん後ろへ行ってしまうし。
さて、何を話そうか。
「あ、あのー真琴…」
「公子ねえ」
話題に困りながら私が口を開いたのは、真琴の言葉によって遮られた。
「ん…何?」
「俺、ほんとは覚えてるんだ。最後の日に何を話したか、俺が公子ねえになんて言ったか」
月がぼんやりと明かりを落とす。海風の音と波の打つ音が耳の奥で聞こえる。
「さっき、公子ねえは鎌をかけたつもりなのかもしれないけど」
「う、うん」
「それはきっと、自分がなんて俺に答えたか思い出せないから聞けたんだと思うんだ。違う?」
「っ…」
御名答だった。私は最後に会った日に真琴に言われたことは覚えているが、自分が何て返したかは覚えていない。
だから真琴に答えを教えてもらおうとしたのだ。
真琴は海を目を細めて眺めていたが、こちらへ向き直り静かに口を開く。
「俺は…」
to be continued…