• テキストサイズ

other blue【Free!短編集】

第2章 ノース・シー(真琴)



ある晴れの日、電車からホームに降り立つとどこか潮っぽい香りがつんと鼻をつく。
この香りを嗅ぐと、地元に帰って来たという実感が湧く。

ぐんと腕を空に伸ばし、海沿いにある実家への道に目をやると、背の高くがっちりとした青年と目が合った。

「公子ねえ…!?」

「…え、真琴?」

昔馴染みとの、久しぶりの再会だった。



どうやら真琴は部活の後輩を駅まで送った後らしく、私も急いで実家に戻ることもなかったので、二人でお茶をすることになった。

「久しぶりだねー真琴、何年ぶりだろう」
「5年、や、6年7年…くらい?」
「最後に会ったの、真琴が小学生の時だったもんね。今は?高校生?」
「うん、岩鳶の2年生」
「へー大きくなったね!すっかり男の子になってて一瞬誰か分からなかったよ」
「公子ねえも、その…綺麗になってて、びっくりした」

頬を赤らめながらはにかんで言う真琴。恥かしがりのくせに恥かしいことを素直に言ってしまうあたりが、昔と何ら変わっていない。



私の父親は漁師だった。私が高校生だった頃、父のところに小学生が来るようになった。小学生の名前は真琴。同じ町に住んでいるようだった。
真琴は父を慕い、時々私とも遊んだりしていた。

しかしある日、父が海難事故で死んだ。それ以来真琴が実家に訪れることはなくなり、高校を卒業した私は家計を助けるために上京し働いた。



「真琴、私たちが最後に会った日に話したこと、覚えてる?」
「え?えーっと…」
「特別な話をしたんだけど」
「…ごめん、覚えてないや」

そう言うと真琴は申し訳なさそうな顔をした。
少しからかいすぎたかもしれない。

「ごめんね、なんでもないの」
「?」
「いつもとおんなじ、なんでもない話だったよ」



そう、高校生の私と小学生の真琴がしていたのは
いつだって特別で、いつだってありふれた、そんな話だったのだ。



to be continued…
/ 28ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp