第1章 アイスランド・ブルー(遙)
ずっと景色を見ていては声をかけた目的を見失ってしまうので、私から沈黙を破った。
「今日もう授業終わりだけど、この後用事ある?冬でも水泳部休みじゃないよね」
「今日は休みだ」
「へえ珍しい、なんでまた…」
「ハルー」
聴き慣れた優しい声が、私たちの会話を遮った。
「橘くん」
「真琴でいいよ、こんにちは公野さん」
「私も名前でいいよ、えーっと…真琴くんっ」
「ほんと?」
照れちゃうなと言いながらはにかむ彼は橘真琴くん。
ハルの幼馴染で、今もハルと同じ水泳部に所属している。
「それで真琴くん、今日水泳部休みなんだって?なんで?」
「あーなんか駅伝部が試合前らしいんだけどね、このところの雪で練習できないから、いつもうちが屋内練してるところを貸すことになったんだ」
「なるほどねー」
「どうかしたの?」
「や、用事ないなら出かけようってハルを誘ってたところ。ね、ハル」
「ああ」
やっと喋った。ハルは基本的に寡黙な方だから、私や真琴くんみたいなおしゃべりがいると黙ってしまう。
「それでハル、もしよかったら出かけない?」
「いいねーハル!行ってきなよ」
「何言ってるの、私今真琴くんもお誘いしてるんだよ」
「え、俺もいいの?」
「もちろん!人数多い方が楽しいから!」
「うーん…じゃあご一緒させてもらおうかな」
「やったー!ほらハル、早く帰る支度しちゃおう」
「俺行くって一言も…」
「え、行かないの?」
「…行くけど」
私と真琴くんは顔を見合わせ笑った。
「あー楽しかった!付き合ってくれてありがとうね」
「俺たちも楽しかった、誘ってくれてありがとう、ね、ハル」
「ああ」
放課後は学校帰りにあるお気に入りのカフェに行き、3人でとりとめのない話をたくさんした。
水泳部のちょっと和やかな気持ちになる裏話なんかも聞いてしまったり。
「ごめん公子ちゃん、俺母親に夕飯の買い物頼まれてて…」
「そっか、私たちもついて行こうか?」
「もう遅い時間だし暗いし大丈夫。ハル、公子ちゃんのことちゃんと送ってあげるんだよ?」
「分かった」
「じゃあ二人とも今日はありがとう、また明日!」
大きく手を振りながら遠ざかる真琴くんを見送り、私たちは二人きりになった。
途端、ハルは目の前の公園へ足を進めた。
to be continued…
