第6章 アミーゴ・ブルー(百太郎)
かちゃん、とシャーペンが落ちる音が聞こえた。
「…お、お、お」
「何?どうしたのモモ」
「終わったー!!」
「わ、ほんと!おめでとう!」
ふたりで手を叩いて喜んでいると、モモが徐に頭を垂れた。
「つかれた?」
「んー…」
「…がんばったね。お疲れさま」
モモの少し硬めの髪を指ですく。モモは時々小さな声で笑いながら、気持ちよさそうにしていた。
「…ん」
いつの間にか眠ってしまっていた。
外は薄く白んでいる。明け方かしら。
携帯をとろうと手を伸ばすとふにゅりとやわらかいものにふれた。
「ん、何これ」
「んんん、いひゃい公子…」
「は!?」
飛び起きると隣にはモモがいた。どうやら昨日の晩はあのまま寝てしまったみたい。
「やってしまった…」
「ご飯そこに置いてるから、早く食べちゃうんだよ」
「わかったー!シャワーありがとな」
「途中まで一緒に行こ」
慌ただしく朝食を食べていると、モモの手が止まっているのに気づいた。
「モモ?どうかした?」
「ん?んーなんか、こうやって一緒のご飯食べたり起こされたり、なんかフーフみたいだなっ」
「!?ば、ばっかじゃないの?ほらさっさと行くよ」
私は足早に立ち上がり支度を始めた。後ろでモモが何か言っているけど聞いている場合じゃない、首を隠さなきゃ。どくどくと脈打つ心臓を、はやく落ち着かせなきゃ。
「はえーよ公子!ほら鍵」
「ちゃんと閉めてくれたんだね、忘れるかと思った」
「なーに言ってるんだよ!」
そう言うとモモは前へ行きくるりとこちらを向く。
瞬間、並木の葉がさわさわと騒いだ。
「もう子供じゃねーっつーの」
「…はいはいっ!ほら行くよー」
「あーもうまたはえーし!待てって公子!」
私は速足で進み続ける。追いつかれてはいけない。
はやく、はやく冷めて。
火照った顔も、首筋も。
「…ばか」
子供っぽくて、ばかで、無計画で。
昔と何も変わらない。
私の気持ちだって、ずっと…
ずっと、変わらない。
いつかきちんと言えるその日まで、どうかどうか、色褪せることないままで。
end**