第6章 アミーゴ・ブルー(百太郎)
「もーちょーかわいくて!」
「…」
手が止まってるぞ、ちゃんとやりなさい。
「でさーこの前の合同練習の時にもさー」
「…」
誰のために付き合ってやってると思ってるの?そんな話を聞くためじゃないんだけど?
「おーい公子?聞いてる?」
顔を覗き込む暇がお前にあるのか!
「…るっさい!」
「っだ!!」
渾身のでこぴん、炸裂。
「ぜんっぜん痛いのひかねーんだけど!」
おでこをさすりながら、モモこと御子柴百太郎はやかましくがなっているが、対面に座る私は知らんぷりで教科書に目を落とす。
「モモ」
「なんだよ」
「今日どうして私を呼んだんだっけ?」
「うっ」
モモの動きが漫画みたいにぴしっと一度停止した。バツが悪そうに続ける。
「俺の夏休みの課題が終わってないから…」
「提出期限いつだっけ?」
「明日…」
「間に合わなかったらどうなるんだっけ?」
「部活に出られない…」
みるみるうちにしょんぼりとなっていくモモ。ちょっとかわいそうだし、そろそろケリをつけますか。
「こういうとき、なんて言うんだっけ?」
「…ごめんなさい、勉強を教えてください公子さん」
「はいよく言えましたっ!もう少し進んだら休憩しようね」
名前を呼ばれる度に首筋が熱くなる。きっとまた赤くなっているのだろう。いつものことではあるけれど、気付かれないためにそっと手の平で覆った。
私とモモは小中学校が実家が近所で、中学を卒業するまでは家族ぐるみで仲良くしていた。けどモモに寮制の高校・鮫柄学園に進学すると言われたとき、私も無理を言って鮫柄学園に近い高校への進学を決めた。今はモモは寮、私はワンルームマンションの一室で一人暮らしをしている。
家族に無理を言ってまでモモのそばに居続けているのは、それなりの理由があって。
「どうしたのモモ?手止まってる」
「んー…うー」
あぁ、まただ。
久しぶりに会えたのに。
「会いてえなあ、江さん…」
そんなうっとりした顔で、他の女の子の話なんてしないで。
to be continued…