第5章 フォーゲット・ミー・ノット(凛)
鮫柄学園の入口に着く。許可証の手続きを済ませ、水泳部がいるであろうプールへ向かった。立派な建物だったのですぐに分かった。
入口近くに赤髪の青年が見えた。間違いない、凛だ。
「凛!」
「?え…は、公子さん!?」
突撃訪問、成功。
「ごめんな待たせて」
「いいよいいよ、アポなしで来ちゃったの私だし」
宿を取った私は、学園にほど近い公園で凛の練習が終わるのを待っていた。
「それにしても大きくなったね、今何センチ?」
「あー、177くらい」
「でっか!すごいなあ、早いなあ」
「公子さんは変わんないのな」
「そう?よかった。にしても本当に大きくなったね、かっこよくなっちゃってー」
そう言いながら凛の髪をくしゃくしゃとする。
凛はくすぐったそうな、恥ずかしそうな顔をしながらも、しばらく黙って撫でさせてくれた。
やがて俯いたまま、凛は口を開いた。
「…そんなこと言いに来たんじゃないだろ」
「え?」
ゆっくりと手を下ろされる。
「どうしたんだよ、公子さん」
「はは、凛に御見通しになっちゃうのか…私もまだまだだなあ…」
「何があったんだ?聞かせろよ」
「…分かった。あの時聞かれてちゃんと答えられなかったことがあるの。全部話す」
それから私はぽつりぽつりとではあったが、私は凛にすべて打ち明けた。実家のこと、親のこと、そして倫のこと…
「…明日が倫の命日なの、7回忌」
「…えらいな、公子さん」
「え?」
「勇気出して帰って来たんだろ?頑張ったな」
ふいに、頭に手が置かれた。優しくゆっくり撫でられる。
「ちょ、いいよいいよ…」
「俺がしたいんだ。いいからじっとしてろよ」
むすっとしながらも、変わらず凛の手つきは優しい。
「…話してくれて、ありがとうな」
ああ、やめて。
「気が済むまで泣けばいい。俺はここにいる」
こんな私なんかに、そんな言葉をかけないで。
「辛かったな。もう大丈夫だ」
私は、許されてはいけないのに。
「っ…く…」
外灯の下で、私はひとしきり泣いた。
to be continued…