第4章 ナポリ(渚)
あの時は結局葉月が自分の分のいわとび(略)と、私が買う予定だった焼きそばパンを買った後、保健室まで付き添ってくれたのだった。
その日は成り行きで一緒にお昼を食べたのだけれど、甘さたっぷりボリュームたっぷりのいわとび(略)をにこにこしながらかぶりつく葉月には戦慄したものだ。
思い出すだけで胸やけがしてきた。
「いわとびっくり…」
「え?何キミコちゃん、いわとびっくりパンがどうかしたの?」
「や、ちょっと思い出しただけ」
「ふーん?あ、飲み物来た!」
私の前にはアイスコーヒー、葉月の前にはベリーのスムージーが置かれる。目をきらきらとさせるや否や葉月は早速口にし、ほにゃんと幸せそうな顔をした。
「おいしーい!ね、キミコちゃんも一口飲んでみてよ!」
「私甘いものはあんまり…」
「フルーツの甘みだからだいじょうぶだよ!ほらほら」
そう言いながらストローをずいっとこちらへ持ってくる。けどこれって…
「これって間接キスになるんじゃ…」
「僕気にしないよ?キミコちゃんになら僕の唇あげちゃうもん、なんちゃって」
「…はいはい、じゃあ一口」
そんなことを恥ずかしげもなくぺろっと言えてしまうあたりが葉月なのだろう。
わたしばっかり照れて、ばかみたい。
口の中に、ベリーの甘さとほんの少しの酸っぱさが広がった。
「そういえば、なんでキミコちゃんはナポリタン好きなの?」
まだ来ない昼食を待っていると、徐に葉月が聞いてきた。
「うーん、ケチャップが好きだから…かな」
「そうなんだ!なんか意外だなあ」
「何で?」
「だって…」
そう言いながら葉月はちらりとこちらに目をやる。
「キミコちゃん服装も言うことも大人っぽいし、コーヒーもブラックで飲めちゃうのに、なんだか子供っぽくてかわいいなあって」
「はあ!?」
びっくりして変な声が出てしまった。
「さっきも思ったけど、葉月はもっと『かわいい』って言葉を大事にした方がいいと思う」
「どうして?かわいいと思うものをかわいいって言うのはいけないこと?」
「そういうわけじゃないけど…」
「じゃあいいじゃない!」
けらけらと笑った後、穏やかな顔になり葉月は続ける。
「かわいいよ、キミコちゃん」
「…お前が言うな、ばか」
to be continued…