第6章 綾人について
彼女の腕を掴んで脇道に連れ込む。
大きな目から涙をたくさんこぼしていた。
不覚にも美しいと思ってしまった。
だから、ついいじめたくなった。
「どうしてくれんの?」
それは、どっちかというと僕の言えるセリフでもないけど、そんなことを言えば彼女は怯えた顔をする。
それがかわいくて、もっといじめたくなる。
「何で泣くの。僕のこと怖いの?あのカフェでは僕のことあんなに見てたのに、もう僕のこと忘れちゃったの?」
「忘れてないけど…」
よかった。なんだか、少し嬉しい。
こんな気持ち今までなかったのに。
「じゃ、あのカフェで明日の1時に待ってるから。絶対来てね」
つい、約束してしまった。
彼女に会えたことが嬉しくて、明日が楽しみで。