第5章 太陽と海と私たち
「おい」
その言葉ではっとした。
「こいつから離れろ」
私の肩をぐっと引っ張られて私は春陽から離れる。
顔なんか見なくても声でわかってしまった私を憎む。
やっぱりそこに立っていたのは綾人だった。
後ろ姿しか見えないけど、はっきりわかる。
今、綾人は怒っている。
「久しぶりだね。綾人」
春陽も綾人のことを知っていたらしい。
だけど、なんか仲悪そう。
「で、何の用」
「こいつに用があった」
「千夜に?今、俺は千夜といるから邪魔しないでくれる?」
「お前といようが関係ない。こいつと話があるから」
なんかよく分からないけど、何だか私は綾人に連れていかれそうな気がした。
「私は今、春陽といるの。約束だって春陽の方が先だったし…」
そう言って私は春陽の腕を掴んで行こうと催促する。