第2章 桜降る季節
電車の音で目がさめる。
電車の中から降りる男性。
私も乗らなきゃと急いで立つ。
ポトッ
何かが落ちる音。
さっき男性が落としたみたいで、私はそれを拾い上げる。
「すいません、これ、落としました、、、よ?」
私は男性に目をやると、男性の腕はない。
私の手に持つそれを見ると、それは腕。
つまり、私は男性の腕を持っていた。
声にならない恐怖。
「ありがとう」
男性は、腕を受け取ると、本来の腕の位置に押さえ込み、
「付けるのゆるかったみたい」
なんて、笑顔で言っている。
はっと電車の方を向くと、電車はもう出発していて、今ここにいるのは、私と男性だけ。
逃げなければ殺されてしまうかもしれないけど、逃げることさえできなかった。
だって、その男性は、あのカフェで働いていた人だったから。
それは、悲劇的な再会。