第52章 ケーキ
「オレから聞きたいことがあるんだが、聞いてもいいかな」
『うん?』
「白雪姫の劇が終わった後、言いかけてたことは何だったんだい?」
『…なんか言いかけてた?』
「黄瀬の記憶が戻ったかという問いに対して、戻ったっていうよりとか何か言いかけていただろう」
『…ああ、あれ』
今日の出来事なのに遠い昔のようだとあの世界の記憶を思い出す
白雪姫の世界から目覚めると帝光中で、みんな中学生になっていたのとその前までの記憶が流れてきたことは覚えている
ただ記憶は流れて来ただけで、こんなことあったなと懐かしむことは出来ず藍色の記憶同様ただ知識として得ることしか出来なかった
『説明が難しいんだけど、白雪姫の世界から目覚めたあとは完全にあたしだった
だけどその前にいたのは多分当時のあたしじゃない気がするんだよね』
「へえ?」
『藍色みたいに別人ってわけじゃなくて間違いなくあたしで記憶も共有されてるんだけど
感情とかはあんまり分からなくて、ただみんなが同じクラスって分かった時「頭痛いクラスになりそう」って自分で言ったんだ』
「つまりどういうことだ」
『当時のあたしだったらまず全員同じクラスに驚くと思うんだけど、彼女はそれを受け入れてた
だからあのあたしは、藍色でもない別の自分だと思う」
「…ほう」
『3年間は一緒にいれると言ったり、征十郎が泣いてたのを随分昔って言ったり、なんか…説明できないんだけど、中学生のあたしとは思えなかったよ』
それが何を意味しているのか分からないが、もう1人の赤司が味方でいる限り問題ないだろうと苗字は笑った
目の前の彼女を不安そうに赤司が見つめる。この5年間で色んな事がありすぎたから別の彼女がいると考えると心配が心を支配してしまうのだろう
「だが名前が消えることはもうない。で、間違いなかったね?」
『うん。征一郎が言ってたし、また今度会えたら聞いておく』
「よろしく頼む」
『じゃあまたー…今週末?』
「ああ、応援待ってるよ」
『家着いたら連絡してね?』
「言われずとも」
記憶の中の赤司と同じなようだが、背が伸びてるせいか違う彼を見送って門を潜る
これからのことを考えると少しの緊張と不安があるが、きっと赤司と一緒なら大丈夫だろうと扉に手を掛けて家の中に入った