第52章 ケーキ
『おめでとうございます。驚いて語彙力が飛んでって何も言えないですけど、嬉しいです』
「オレからもお祝いさせてください。おめでとうございます」
「ありがとう…征十郎君が息子になるの…尊い…」
「息子が生まれたら征十郎君のことお兄ちゃんって呼ばせていいかな」
『まだ早いですって』
「オレは構いません」
ナイフを持ち直した苗字はブルーベリーが溢れているケーキを4等分する
だから動画を撮られていたのかと納得しながら切り終えた彼女は酸味のあるケーキを食べながら話に花を咲かせた
食べ終えてしばらくしたところ、赤司がお暇すると言い始めたので家族総出で玄関まで来て、苗字はすぐそこまで送り届けるため靴を履く
「征十郎君また来てね」
「結婚の報告の前に必ずきてくれるかな。息子にお兄ちゃんと呼ばせたい」
『喋れるようになるのが先か結婚が先か…』
「ぜひ。また近々来ます」
手を振る両親に見送られながら玄関を出て、敷地外に出ると赤司が1つ溜め息を吐く
どうしたのかと首を傾げる苗字の視線に気が付いてる彼は微笑みながら理由を話し始めた
「無事に許可が下りて安心してしまった」
『だから大丈夫だって言ったでしょ』
「ああ。万が一と思っていたんだが…杞憂で済んで良かったよ」
『次は…赤司家か…』
「父さんなら問題ないだろう」
『そういうんじゃなくてな?』
「オレもさっきまでそういう気持ちだったよ。大丈夫と言われても不安なんだ」
確かに赤司の父は中学の頃「赤司に嫁ぎに来ないか」と冗談で言っていた
あれは冗談だったんだろうけどそういう間柄になっていることとホワイトデーの時にされた対応を思えば問題ないんだろうが、それでもほんの少しの不安が芽を出してくる
自分の気持ちを分かってもらえたようで笑う赤司が、まだ慣れない彼女のオレンジ色の瞳を見つつ長い髪に触れた