第52章 ケーキ
リビングに戻ると雪が今日撮っていた動画を眺めており、キッチンで雨が食洗器を回していた
母の身のためにも今後の自分のためにも家事をやった方が良いんだろうと彼の背中を見ていると、リビングから雪が彼女の名前を呼ぶ
「名前ちゃん」
『はい』
「ちょっとお話ししてもいい?」
『…はい』
「かしこまらないで!重い話じゃないから!」
じゃあ一体どんな話だろうとドキドキしながら彼女の正面に座ると、いつも通り優しい笑顔で雪は話しかけてきた
「まずは征十郎との婚約おめでとう」
『あ、ありがとうございます』
「征十郎君と付き合ってるって聞く前から征十郎君と…まあバスケ部のあの子たちの誰かと上手くいかないかなって思ってた」
『…はあ』
「もちろん征十郎君が一押しだけど!!小さい頃からたまに会ってたし、名前ちゃんも小学生の頃から仲良かったものね」
『まあ確かに、1番の友人だったと、思います』
冗談で姉と弟と言うくらい仲は良かったし、恐らくプライベートでも1番会っていた
それがいつ恋心に昇華されたかなんて自分自身でも覚えていないと、視線をテーブルに落とす苗字を見ながら雪が表情を変える
「でもね、話したいのは征十郎君と名前ちゃんのお話しじゃないの」
正面に座っていた雪が席を立ちなぜか横に、先ほど赤司が座っていた席に着く
何だと明らかに警戒する苗字の手を両手で包み込み、自身の下腹部に添えさせた
見た目では分からなかったが触ると確かにお腹が大きいことが分かり、無意識に目頭が熱くなる彼女を見ながら雪が笑い口を開く