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掃除婦の恋煩い

第2章 レッツゴーKY


「とりあえず、ここからが無難…か」

そう言って立ち止まったのはトイレの前。
他のどの場所よりも閉鎖的で、尚且つ周りを気にせず仕事が出来る。

「よいしょっと」

そう決めると、キャリーの中から『清掃中』と書かれた黄色い立掛け看板を出して男子トイレ前に置く。
男子トイレは女子用より補充が少ない分早く終わるので、まずは男子用から。

立掛けた看板にははるオリジナルで、下のスペースに黒マジックで

『御迷惑お掛けしますが、別フロアのトイレを御利用下さいませ』

と書いたラミネート用紙を貼っておく。
これは気遣い云々じゃなく、ただ単にトイレで男に遭遇なんて面倒くさいというだけ。
真昼間とは言え、一応個室だし連れ込まれたら大変だからと、散々佐渡に言われている。

「さあてとっ…ふんふんふん」

清掃用具入れから道具を一式出すと、まずは壁拭きから。
一番奥から固く絞った布巾で丁寧に磨く。

掃除は昔から好きだ。
得意なのかどうかは褒められたことがあまり無いから分からないが、汚れが落ちるとなんだか気持ちがスッキリする。
ついつい鼻歌まで歌ってしまう。
忙しいと、仕事だけしか考えなくて良いから忙しく出来る方が好きだな~なんて、先日までの下のフロアでの仕事を思い出して苦笑してしまった。

「今度は天井も磨きたいなぁっと…あ、」

上を見上げれば一箇所の電球が切れかかっている。

「ここのトイレ無駄に天井高いからな~脚立借りれるかな」

予備の電球も無いことだし、なんだかスタッフさんの雰囲気もおかしかったし、今日の帰りがけに脚立の確認だけして明日以降に何とかするとして、とりあえず今日は一通りやることをやらなきゃ。

改めて壁拭きに取り掛かると

キィッ…

後ろで扉の開く音がした。
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