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掃除婦の恋煩い

第2章 レッツゴーKY


「…どうぞ。私は掃除を続けてるんで見られたくなければ個室を使って下さいね。構わなければこちらでどうぞ。」

と指さしたのは男性用。
とにかく今は宇宙人のような人間の相手よりは仕事。
はるは新しいビニール手袋を手に取り、さっきまでの続きに取り掛かろうと居を直す。

「それはちょっと恥ずかしいよ~。少しだけ外に出ててくれたら助かるんだけどな…」

「あーもー五月蝿い!」

男性は少しモジモジしているが、そんな仕草ももう面倒くさい。取り繕うのも忘れて怒鳴りつけてしまった。

「大でも小でも気にしないから、するならする、しないなら出てく!さぁ早くして!」

「きゃー!はーい、またね~」

怒鳴られた男性は、なんだか少し嬉しそうに叫びながらトイレから出て行った。
入ってきた時と同じように手を振るのも忘れない。

「…なんなんだよ、もう…」

今日何度目かの溜息をついて、今度こそ仕事に戻る。
一瞬、お客さんを怒鳴りつけてしまったことに焦りこそ感じたが、所詮私は臨時。
何かあったら吉田さんに押し付けてしまおう。
そうしよう。

「…もう会いませんように」

なんて思っても、多分このフロアの人なんだろう。
また会ってしまう可能性は大だ。

(それにしても…。)
なんてさっきまでそこで大騒ぎしていた男の姿を思い出す。もちろん仕事の手は止めない。

黒髪に青い毛先。
猫?のデザインの黒いTシャツ、ジーパンにブーツ。
会社員?と言われると疑問符が浮かぶような格好の男は、女みたいな仕草で、人懐こい…いや、図々しい?…終始笑顔だった。

(ここは何の会社なんだろう?あんな格好の奴が従業員?怒鳴られて喜ぶとか…M男か…)

さっきの仕事場と良い、M男と良い…あんまり関わらない方が良さそうだな。
ウンウンと独りごちながら、トイレ掃除を進めていく。

(なんでこんなフロアに吉田さんは固執してたんだろ)

そんな疑問を感じつつも、バタバタと仕事をしていくうちにどうでも良くなってくる。
今は目の前の仕事に集中。
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