第1章 わたしたちは 暖かいね
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敏感どうしでお互い距離を図りあって、すこし溝のあったころだった。
同期、ましてやグループ最年少の同い年。
加えて、家族構成をとってもお互い末っ子とくる。
意識がなかったわけじゃない。
"キャラ変"と呼ばれるあれもそうで、俺にできないことができる、時に周りが見えなくなってもどんどん自分を求め高めてく彼の姿が、当時の俺にどう見えていたかは分からない。
少なくとも今の俺よりは、彼の逆端位置にあったことは確かだ。
そんな若い頃につくった彼と俺のその歌を、
無意識に思い返してるくらいの今の俺は…
いや、たぶんその頃も…
時計はそろそろ日付を更新しそうだが、眠る気にはならなかった。
電源を入れてコントローラーを手持無沙汰に握る。
暗闇の中のテレビの画面が騒がしく、ゲームをやっているんだか分からないほど空虚な時間が流れる。
眠りたくないわけがあることは、自分でも分かっているのに、
無意識に喰われた"意識"が望むものも分かっているのに、
動きたくないのはいつだって、俺と彼の決まった位置と機能のせい。
動きをつくるのは彼のやることだから。俺は。
部屋の角に寂しいくらいに放置された、光らないほうの小さなスクリーンをやっぱり手にして、
何度も小さくスクロールしてみた。連絡はない。
あーもうほんと、
「女子みてぇ」
いまどきの女子高生すらこんな煩わしいことしないんじゃないか。
イイ歳したおっさんが、好きな人から誕生日祝われたいなんてどうかしてる。
いや、”誕生日”に執着したことなんて生まれてこのかたない。まして自分の。
だからそんなことに理由つけてまで、彼と、彼の時間とに触れていたいなんて。
「だれが?」
「だれが女子みたいなの?笑」