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鏡の向こう

第1章 わたしたちは 暖かいね 





side/N





いつもの定位置ではない、部屋の壁の角に収まって足を立てて座る。
手もとに置いた携帯電話の画面に目を落とす。

とくに興味のない顔をしながら。
とくに興味はないと、自分に言い聞かせながら。
とくに興味はないよと、誰かに見せつけるように。



一通り、メッセージは来た。
そうそう。
友だちが少ないと豪語する俺にしては、申し訳ないほどたくさんの言葉を頂いた。
有難いことに、撮影でも祝ってもらった。




「…そうよ。そうなのよ。そうなんだよなぁ」


無駄な邪念を捨てるために、
半ば強引の鼻歌を混じらせて、キッチンへ水を取りに行く。


これ、なんの歌だっけ。


「嵐さん、嵐さん」


自分らの歌だということは間違いないのだが。
すぐにタイトルが浮かぶほど、最近のものではなかった。

たしかしばらく家でも聴いてた、何か思い入れのある・・・



コップの水が、苦いものでも飲み込むようにゆっくりと喉を通って、少し間が開いて苦笑いした。

キッチンからいつもの定位置へと戻る今度は、はっきりと詞がついていた。













「目を閉じて感じているの、唇から足の先まで 」

潤くんと歌ったものだ。



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