第9章 ゆっくり(エルSaid)
「どう?」
「どう…って、あ、まあ…いい感じだと思うけど」
翌日の朝の通学路。ロイが心配そうに聞いてきたから、そう言った。ロイは眉をしかめた。
「曖昧だな」
「確実な答えをもらった訳じゃないんだ、でも母さん悪い気分ではなかったよ」
少し納得してロイはそっぽを向いた。
その時は母さんの事を考えていた。あれ以来特に母さんは俺に暴力的にならないし、いつも通り大人しい。
でもなんだかそれが怖くて安心できないままでいた。
「はやく良くなればいいな」
少し微笑みながらロイが言った。
俺が頷くと何だか少し不安が吹き飛んだ気がして胸を撫で下ろした。
そういえば、今までの事全部ではないけど、ロイはいつも俺に協力してくれた。
気づくのが今更だなぁ…。
そう思うと何だか嬉しいを越えてありがとうでも伝わらなそうな気持ちが沸き上がった。その時の俺はその気持ちには気づかなかった。