第9章 ゆっくり(エルSaid)
俺は今どうなってるんだ。
「やっぱりおかしい!おかしいよエルお兄ちゃん!」
「いつもに比べれば…そうねぇ、少しおかしいかも」
目の前には身を乗り出してるキリーと、両手を組んで顎を乗っけているイブキ姉さんが居る。
イブキ姉さんが休みがとれたって言うから三人で家に呼んだ。そこまでは良かった、なのに…なんで?
別にキリーに勉強を教えてるとか、そういう訳じゃない。ただ話してたら急にそう言われた。
「エルお兄ちゃんどうしたの?おかしいって、今日」
「えぇ…いつも通りだけど」
正直に言うとキリーは頬を膨らませて「うっそだぁ!」と言った。少しだけ怒ってる気がした。
「だって今日のエル君、ボーッとしてるし目を合わせると顔赤くするし…」
思い出すようにイブキ姉さんが言った。確かに、と思いながら話を聞いていた。
「そうねぇ…例えるなら」
うーんと悩みながらキリーが言った。
「女の子!」
「は?」
「それも…恋する、ね」
ニヤニヤと笑いながらイブキ姉さんとキリーが言った。
そういえば前に、何だかよくわからない気持ちにならなった。もしかしてそれのこと?とちょっと思った。
「せめて恋する男の子が良いところだけど…俺、好きな人とか思い当たらないんだけど」
頭を掻きながらそう言うと、目を光らせて二人が俺を見た。
「嘘、嘘よね?エル君?」
「クラスのだれかさんがすきだったりして!」
きゃっきゃと言いながら、満面の笑みでキリーがはしゃいだ。
イブキ姉さんも笑顔だったけど、裏があるようにしか見えなくて怖かった。
「それで?」
イブキ姉さんが口を開いた。それに何故か驚いた。
「誰なの?」
キリーがよく見る戦隊もののアニメの敵役の笑みはこんなんだろうなと思った。
それほど怖かった。