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ぼっそり

第8章 ちくちく


「いい加減機嫌直せよ」

エルを軽く揺らしたら「平気」と言ってむっくり起き出した。
少し照れ笑いをしてこっちを見た。

「今何時?」

「五時半」

「ふうん」と言ってから小さく溜め息をついた。
さっきまでの事、俺には未だによくわからないけどエルが機嫌をなおしてくれてよかった。

「俺さあ明日か今日に母さん説得してみるよ」

「今までは押されてて泣いてばっかだったんだけどさ、頑張ってみる」

エルは恥ずかしがりながらも、言ってた。

「…そう、か。考えなおしてくれるといいな」

不思議と俺にも笑みがこぼれた。

このときにふと思ったけど、一瞬エルがいつものあのエルに戻った気がした。前から薄々感じていたけど今回のは少し違う、何だか居るだけで落ち着くようなあのエルだ。

「…ふ」

「はは、はははは」

その時見たエルの驚いた顔はおかしかった。まるで俺が全く笑えない奴が笑った時のような反応だった。

そう思われても仕方がないんだと思う。でもその時の俺は嬉しくて嬉しくてたまらなくなって、つい吹き出した。

つられて二人で笑いあってたあの時はとても心地が良かった。
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