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ぼっそり

第7章 どろどろ(エルSaid)


風呂の用意をしようと寝巻きを脱衣所に置こうとした時、母さんの部屋から風の音がした。
暗くて気がつかなかったけど、ドアが微妙に開いていた。静かに入ってみると窓から吹いていた風だとわかった。

夏が近いからかもしれない、夜風が心地いい。少し風を感じてから窓を閉めた。
外の住宅路の電灯の白い灯が目についた。今はほぼ見えない空の星も、あんな風に輝いていたのかな、そんなことを考えてた。

その電灯に照らされるように机の上に光るものがあった。
まさか、と思った自分を恨みながらもそれを取り上げた。

やはり、薬。隣には瓶詰めの薬。
見てみると睡眠薬だった。眠れてないのかもしれないと思った。

今回も薬を全部捨てようとした、でも無理だった。母さんが部屋に戻ってきた。

「エル、お風呂…」

母さんが居たことに気がつかなかった俺はビクッとして微妙に震えながら母さんに目を向けた。
母さんは俺が薬に手を差し伸べているのを見て驚いた顔をしていた。
風呂上りだったから、多分風呂があいたことを知らせに来たんだと察した。

「何、してるの?」

優しげな震えている声で半笑いになりながら母さんが言った。俺は颯爽とその手をしまった。

「まさか、ま…さか、そんな」

母さんは混乱して頭を手で押さえてしゃがんだ。今にも泣き出しそうな、顔をしていた。
何故だか、悪いことしたような気がして自分の心が圧迫されて今にも破裂しそうな心持ちになった。

「捨て…たの」

しゃがみながら俺の方を見て泣きじゃくっていた。あの時と同じ、母さんじゃない母さんだ。
あの時のことを思い出すと叩かれた事の怖さに怯えるしかない。またされるんじゃないかと思うと今から怖い。
ずっと何も言わずに黙っていた。

「また、またなの、また捨てたの」

「ねぇ、俺止めてって言ったよね」

「どうしてまだあるの」

母さんは突然に怒り出して俺を強く突き飛ばして一階に降りていった。一瞬頭が白くなって何が起こったのかわからなかった。
あともう少しで机で頭を強打しそうになった。母さんが殴りかかってきそうで怖かった。
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