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ぼっそり

第7章 どろどろ(エルSaid)


皿を全部片付けて、食器棚にのせた。皿からつたった水滴が腕を流れた。それをそっとタオルで拭いて、手の水を振り払った。

夜九時、キリーと母さんは風呂に入っている。台所から風呂場は近いから話し声がよく聞こえる。
それを聞きながら、ふと父さんを思い出した。

今は居ない、父さん。血が繋がってるのに側に居ない。
まだキリーが産まれて間もない頃に離婚してどこかへ行ってしまった。

それから、俺が父親的立場に立っている。まあ、キリーからは「エルお兄ちゃん」としか呼ばれないけど。

薄暗い廊下を歩いて自室に戻った。いつもより、しいんとしていた風に見えた。

夜は静かで冷たい。一人で居ると不安になる。
窓の外の夜空を眺めながらそう思った。

小さくキリーと母さんの話し声が聞こえる。楽しそうだった。

俺も出来ればもっと父さんと話してみたかった。小さい頃だから顔も声も、どんな性格だったかも、名前すらも覚えていない。
ただ、母さんが「エルに似ている人よ」としか聞かされていなく、それを信じるしかなかった。
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