第6章 じんわり
「なあ、俺はお前を脅してる訳じゃないんだ。心配してるんだよ」
そう言ってもエルはこちらを向いてくれなかった。
「わ、かってる…そんなの気づいてる」
「言えないって事は、俺は邪魔虫って事か?…別に邪魔ならもう一切この事には手を出さないが」
「じゃ、邪魔じゃない。でも、でも…ロイ、は」
黙ってエルの目を見てそれを聞いた。けれどもそこでエルはまた黙りこんだ。
「エル!」
少しきつめに怒鳴るようにエルの名を呼んだ。自然と手が出ていてエルの両手首を掴んでいて今にもエルが押し倒されそうだった。
「な……なに、ロイ」
気がつくと泣き出しそうな目をしていたエルの目にじんわりと涙が浮かび上がっていた。
「…は」
それに気がついた時はもう遅かった。エルは次々とぼろぼろ涙を流していた。恥ずかしさを感じたのかエルは目をつぶった。
「あ……わ、悪い」
手を放すとエルはそそくさと袖で涙を拭き始めた。少し強くやり過ぎたかもしれない。
「悪い、つい…」
「いーよ、平気」
涙を拭き終わったエルがいつものようにへらへらしながら笑った。
それに安心して、袖で顔を隠していたエルの頭をそっと撫でてた。
「…うぇ、え、ちょ…ロ、ロイ?」
「…ん?」
「あ、え、いや…何でもない」
…あれ、何で俺エルの頭撫でてるんだ?
ふと頭にその疑問がよぎった。エルは驚きながらも顔を赤くして喜んでいた。
…何でだ、俺もおかしいぞ。