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ぼっそり

第5章 ぐさり


昼休み、今日は久しぶりに委員の仕事日だった。あまり活動が無いからほぼ暇しかしていない。
俺の委員は図書委員だ。図書室で本の貸し借りを管理する。
仕事が多そうなイメージがあると思われるが、この学校の生徒はあまり図書室には立ち寄らず、むしろ来る生徒の方が希少だ。
そんなこんなで暇で暇でやりきれない。
因みに、俺はその希少な生徒の一人とも言える。俺がいつも読んでいる本も大体はここから借りている。
エルは、別の委員でこんな暇潰しにもならない仕事の委員ではなかった。
もっと良いというか、もっとやりがいを感じられるような、そんな委員だった気がする。委員名は忘れた。

あまりそういう物事に関心を持っていないのもあると思われるが…。

というわけでそんな暇潰しにもならない委員に所属する俺は仕事を任されようが、堂々とカウンターの席に座りいつものように読書。
ここは店でもないから盗む奴なんてそうそう居ない。居たとしたら怒るよりも先にうんと笑ってやりたい。もちろん、これは褒めてる意味での行為であってバカにしている訳ではない。

そんなくだらない事を考えていると、一人の大人しそうな女生徒が両手で丁寧に本を差し出していた。
少し緊張しているのか、目を見てわかった。今にも泣きそうになる目をしていた。
そんな一人の女生徒を泣かせるわけにもいかないので、本を受け取って貸し借りの管理書に書いてまた女生徒に渡してあげた。
よほど緊張していたらしく、その女生徒は颯爽と早走りで図書室を出て行った。

何故かその女生徒が脳の片隅にこびりついて離れることのない、変な昼休みだった。
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