• テキストサイズ

ぼっそり

第4章 しんしん(エルSaid)


さて、次はシュートの練習だ。
ネットの下でパスをしてからゴールネットにシュートボールを入れるという簡易的なものだ。

最初は俺の番。ロイがパスをしたんでそれをキャッチしてゴールネットに投げ入れた。
でもゴールネットの輪に当たってしまい、あともう少しのところで入るところだったのにダメだった。

次はロイの番だ。ちゃんとやってくれるといいんだが…
「いくぞ」と声で合図を取ってからパスを投げると、ロイはちゃんとそれをキャッチしてゴールネットに投げ入れた。
珍しくちゃんとゴールした。

「やればできるじゃん」

そう言ってもロイは冷めた表情でボールをこっちに投げてきた。なんだ、まだ不機嫌なのかよ?

次もまた俺の番なのでロイにボールを渡した。
ロイが俺に向かってパスをしてきたんで、今度もちゃんとやってくれるだろうとゴールネットにボールを投げ入れた。
今度は入ってくれるといいが…と少し期待を混じらせて投げたボールをじっと見つめていると、ネットにボールが入った。

何とも言えない静かな喜びを感じた。
しかし、そのあとロイがゴールネットの下に入り込んで俺が投げ入れたボールをわざと頭にぶつけた。

「…ロイ!?」

あまりにもおかしいんで笑うことも注意することも怒ることすらも何もできなかった。
そのまま目をぱちくりさせているとロイが先生に向かって歩いて行ったんでついていったら

「先生、ボール頭に当たって頭痛がするんで保健室行ってきます」

なんて言ってた。これはまずい、と思って許可しようとした先生と行こうとするロイを引き止めた。

「先生、大丈夫です。こいつ思ったよりも石頭なんですよ。だから大丈夫です。何かあったら僕が保証するので」

ロイの首を腕で挟みあげて元の場所に戻った。
その時は先生の顔をしっかりとは見ていなかったが、きっと「どうしたんだ、あいつら」なんて顔で俺等を見ていたことだろう。

「お前、二度とこんなことやるなよ」

「まさかここまで来るとはな、でも痛いのは確かだ」

「やったのはお前だろ。自業自得だかんな?俺は関係ないぞ、いいな」

少しキツめに言っておいてやった。でもどことなく未だに羞恥心が感じていた。
/ 57ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp