• テキストサイズ

ぼっそり

第4章 しんしん(エルSaid)


授業時間。今日はロイが苦手で、大嫌いだと主張してたまらない体育があった。
体を動かすこと自体があまり好きではないらしく、それに担当の先生も苦手なタイプなんだそうで敬遠しているのだそうだ。

因みに俺は体育は好きでもなく嫌いでもない、いわゆる普通ってやつだ。
やれと言われたらやるし、危険だったら止めておく。大きな声は出せないが大体クラスの奴とは仲が良いのでコミュニケーション能力は長けてるんじゃないか、という自信はある。だから、実技でダメだったらそこで上手くカバーするしかない。

こんな話をロイにしてもただ何も言わない無言の圧力が永遠とかかるだけだ。体育の時間になれば、ロイは全く喋らなくなる、それには俺にも含まれる。困ったものだ。

「体育…やりたくない」

「まあまあそう言うなって。な?」

「………そう思えるエルが羨ましい」

外の景色を眺めながらロイは小さな低い声でそう言った。
どうやら相当嫌みたいだ。



今日は体育館でのバスケットボールだった。
といってもまだまだ授業が始まったばかりなので、パスの練習やシュートの練習といった感じだった。
二人組を組め、と言われたものだからとりあえずやる気のないロイをどうにかしようと自分から誘った。
ロイは嫌そうな顔をしながらも、許可してくれた。

ボールを取りに行くとロイがだるそうな姿勢をしながら立って待っていた。
とりあえず最初にパスの練習をしようと合図を送ってボールを投げた。するとロイはそれをキャッチするかと思えば避けた。

「…は?」

一瞬何が起こったのか自分でもわからなかった。
ロイに向かって投げたボールがロイに渡らずに転がっていった。…いや違う。俺の投げ方が悪かったんじゃない。
ロイが避けたんだ。

「おい、ロイ!避けるなよ!」

俺は恥ずかしい気持ちと怒り狂った気持ちが混じり合ってものすごく恥をかいた、と思った。
いいや、全部ロイのせいにしておこう。
しかし先生は別のペアを見ていたらしく俺らの声も何が起こったのかも見ていなかった。正直ホッとした。
/ 57ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp