第3章 じわじわ
授業が終わって、帰る準備をした。
今日は持って帰る教科が多いので、担任にバレないようにこっそり教科書を置いていった。
エルは先に昇降口で待っていた。今日はキリのお迎えがあるらしく、途中で小学校に寄るのだそうだ。
キリの小学校は、エルも俺も通ったことのあるいわゆる出身校だ。
でも、俺達が通っていた時に居た先生はほぼ他の学校に転移してしまい余り小学校に残っていない。
だから俺達が校門前で先生に会っても見知らぬ男子高校生二人になる訳だ。
「懐かしいな、この道。あまりこっちの方は通学ルートになってないもんな」
「遠回りだから仕方ないだろ。ここから行けば結構時間食うぞ」
「そんなに?遠いんだな」
そんな会話をしながら小学校に向かった。
学校から小学校まで少し長い距離だった。寄り道をしなくても30分位はかかる。
「…ん」
ふとエルの手を見ると珍しく絆創膏が指にはってあった。
「どうした、何かついてるか?」
「いや…お前、手どうしたんだ」
エルは少し驚いた様な顔をして、少し身震いをした。
「あぁ…これか?包丁の切り傷だよ」
エルは絆創膏がはってある手を片手で隠して、そっぽを向いた。握っていた手の力が強かったのかエルは小声で「痛ッ」と言った。
不思議に思って軽く手を触ってみると、エルは少し戸惑っていた。
「…だから切り傷だって」
真っ直ぐエルの方を見ても目を合わせようとはしなかった。微かに震えてるのが微妙にわかった。
どうしてもエルは教えてくれないので、優しく手を離して背中をポンと撫でた。