第3章 じわじわ
「おはよう、エル~」
「おう、おはような」
珍しくエルよりも先に教室に居たクラスメートの女子がエルに話しかけてきた。おかしなことを言うが、あまり知らない顔だ。
どういう人かもそんな名前なのかもわからないし知らない。
さすがにここまでの奴は相当珍しいと思うが、それが俺ということだ。
遠目に見ていたがエルと女生徒は楽しげに話していた。
ああやって誰とでも話せるエルが羨ましい。
そう思っても俺は誰かと話そうとも努力せずにただ自席に座って、持ってきた本を読むだけだ。
こういう部分ではエルと俺は正反対の性格だ、と思う。
そうやって遠目にエルと女生徒を見ているとエルが俺に気付いたらしく、女生徒と話を済ませてこっちに来た。
「悪い悪い、あいつ話し出すと止まらないんだよ」
「別にいい。それに…俺はお前を呼んでないぞ」
「………えっ、だってさっき見てたし」
エルは少し焦ったような顔をした。どうやら勘違いをしたみたいだった。
「暇だから見てただけだ」
「お前に見られると何かすっごい気まずいんだけど…気をつけてくれよな。睨みつけてる感じがする」
「俺は目つきが悪い、と?」
「言ってねぇよ?!」