第19章 面倒
あの春の帰り
仁王君を巻き込んだ帰り道
電柱と彼の背後から見たのは
全身真っ黒な夜の闇に紛れるような格好をした高橋姉妹の姿
声は低く楽しそうで、ようやく見つけたって話だった
1つ年下の双子なんて早々いない
これは4年生の時の小学校だったはずだ
確かその時は...東京の学校に通っていた
そんな自分もつい最近まで忘れていた
彼女達が廊下を進んでいる時に普通に話す
僕の事は「鬼」と呼び、会話が成り立つ
オンラインゲームの話をしながらあの鬼をどうやって倒すのかと言っていた
初めて聞いた時はゲームの話かと他っておいたが
それにしてもやけに生々しい会話をしている事に気づき
そしてその討伐対象が僕であるとわかった瞬間
大きな声で笑いそうになった
こんな近くに僕の敵がいた、彼らの傍に敵が近づいていた
顔を見たときは知っていたが話している内容を理解すれば
かなり本気に殺りにきている事もわかった
誠さんからの話だと
僕が転校してから暗殺者として働いているようだ
そしてそんな暗殺者の業界では僕の事が欲しいようだ
経歴や身体能力、仕事の効率化
それらを評価して欲している
実際、誠さんとアメリカに居る時は犯人逮捕を手伝っていた
そこから情報が漏れたのだろう
さて、これからどうしようかな
頭の中で考えているうちにボトルを丹念に洗いドリンクを入れた
自分で味見をしてから蓋を占める
人数分のドリンクを籠に入れ、扉の取っ手に手を掛けた
?「先輩は覚えていますか?私の事」
扉の前に誰かが立っている
その人物はこの合宿に居ない人物である
『東京の学校に通っていましたね。それだけしか覚えていません』
?「...外国で逮捕した麻薬を密入国させた男の人は?」
『覚えています。僕が取り押さえた事ですから』
?「...両親が、あなたに殺されたのは?」
『っ...、わかりません』
?「本当に?あなたが殺したんだよ?」
『知りません』
?「絶対に殺してやるから」
『では、僕から1つだけ質問をよろしいですか?』
?「何?」
『何番目の村の方ですか?人物の特徴を言えばわかるかもしれません』
?「...1番目の村。写真、置くから」
気配が薄れると共に離れていく足音
扉を開けて足元に落ちている写真を拾う
『姉が母親似。妹が父親似か』