第19章 面倒
白川側
1年と数か月前にあった事のある顔は少しだけ大人びていた
それもそうか、これでも一応高校生
大人の1歩前段階
僕は子供でもなければ大人でもない、勿論老人でもない
子供と大人の間を一生彷徨っている
自分の言いたい事を言葉にして口から出す事が出来ない子供
自分のやりたい事を押さえて周りに身を任せる大人
これらが揃うとどちらに流れても同じ事だ
だけど、その間をずっと彷徨っている
不利になれば喋らない、イライラすれば素直に口に出る
最近は嬉し事がわかってきた、楽しい事がわかってきた
それらを言葉にして伝える手段を知った
仁「なんじゃ?何を考えておる?」
『あ、仁王君』
合同合宿1日目
皆移動で疲れていると思い、軽いトレーニングと打ち合いをしていた
僕が担当するのは勿論、立海
三輝さんが青学に行き
蒔苗さんが氷帝のマネと2人でやっている
氷帝の子も1年生でマネの経験が薄いようだからだ
木陰の下でバインダーを持ち、皆の事を書いていた
仁「それは?」
『これですか?これは皆さんのステータスみたいな感じです』
仁「ほう...」
『得意なコース、苦手なコース。打ち返すタイミング、グリップの握り、瞬発力に動体視力、足の速さ。等々』
仁「細かいのう。そこまで見とるんか?」
『マネージャーですしね』
仁「そうか」
最近、仁王君によく頭を撫でられる
『髪がボサボサになるのでやめてください』
仁「ええじゃんよ」
『僕がよくありません』
バインダーを脇に挟み、髪形を直していく
仁「幸村から「ドリンクがほしいね」と言われておる」
わざわざ声まで変えて言ってくる辺り
春の幸村君の恨みは此処で買われているのではないかと思う
『わかりました。用意してきます』
仁「俺も行くぜよ」
『此処は跡部君の別荘ですよ。大丈夫です』
そのままバインダーを彼に押し付けるようなかたちで
マネージャー用の建物に入った
蒔「あ、白川先輩」
『蒔苗さんもドリンクを?』
蒔「はい」
『お仕事、頑張ってくださいね』
ドリンクボトルを手に取って洗剤で丹念に洗っていく
蒔「お先に失礼します」
『はい』
ドリンクボトルを籠に入れて静かに扉を閉めた
残念だけど、彼女の作戦は失敗に終わった
ボトルに毒を盛られるとは