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古きパートナー

第18章 殺伐の春


『......』

気持ち悪い、視界が歪む、足が笑ってる、頭が痛い

長く湯の中に入っていたら

固まっていた血が溶けて

透明な湯を少しだけ赤くしていた

白いバスタオルに赤色が付着する

そもそも湯が軽く染まるだけの血を流していた事に

自分で一番驚いた事だ

これを貧血と呼ぶには哀れな姿だな

『はぁ...』

ガンガンと頭を攻撃する何かに溜息を吐き捨て

パジャマ代わりのジャージを身に纏って洗面所から出た






仁「遅かったのう」

『どうも』

わかっていた

玄関のすぐ隣は風呂場だったから

重い金属の扉が開いた音が聞こえ、知っている気配であった事

向こう側に向かってリビングのソファーに座っている仁王君

先程は本当に悪い事を言ったと思い

明日の朝にでも謝罪しようと思っていた所だが

この体調では明日を無事に過ごせるか問題であった

不気味だった湯は捨てて軽く洗ってから出てきた

仁「早くこっちに来んしゃい」

『...わかりました』

フラ付く足に力を入れて前に進む

後もう少しと言う所で自分の足が自分の足に引っかかり

前のめりになった所で

仁「!」

後ろから仁王君に抱き付く格好となってしまった

首に腕を回して、フローリングの床に膝立ちしてしまった

仁「...氷月、何をしとるんじゃ?」

『すいま、せん...』

そこで意識が途切れた






『うぅ...』

見慣れた天井が視界に入り

クラクラする頭を少しだけ押さえた

額には冷たい何かが乗っていた

仁「大丈夫か?」

『......』

ベットの中にいる僕に、ベットに腰かけている仁王君が語り掛ける

『軽い、貧血、かな?』

仁「そうじゃろうな。あんな風呂は初めて見たナリ」

『...え?』

仁「タオルを水で濡らした時に、余っておるのを見たんじゃよ」

『そう言う事ですか...』

仁「あんなんになるまでほかっておいたんか?」

『考え事をしていたらいつの間にかああなっていて』

仁「風呂の中で考えるんじゃなか」

『わかりました』

右腕には丁寧に包帯が巻かれていた

仁「寝取る間に傷口を消毒したナリ」

『ありがとうございます』

仁「明日は休みんしゃい」

『わかりました』

仁「じゃから」

『?』

悪戯っ子のように微笑んだ彼

仁「俺と寝るんじゃ」
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