第17章 甘い日
『...新入生の事です』
顔に熱が入り込んでくる
鼓動が速さを増していく
その腕の中が暖かくて安心する
最近は自然と頬が緩むようになってきた
仁「その表情じゃ。その表情が見たかったんじゃよ」
耳元で囁かれている声に体が何かを求めているように
胸が疼きだす
首筋に冷たい物が急に降ってきた
『!』
それに驚いて体が自然と跳ねてしまった
仁「すまんすまん。まだ髪を拭いておらんのじゃよ」
腕を外して後ろを向けば
悪戯っ子の微笑みを零した色っぽい仁王君が立っていた
『風邪を引きますよ』
仁「わかっとる」
そう言って隣に座る彼は僕の光
太陽のような暖かな光を放ち、一寸先も見えない視界に光を入れた
僕は立ち上がり彼の持っているタオルを奪い取る
仁「氷月?」
彼の背後に立って縛っていない長い髪を見る
本当に綺麗な髪だと思う、髪質も柔らかいようだ
そんな彼の頭にタオルを掛けてゴシゴシと水分を奪っていく
仁「気持ちええのー」
『昔、よく優真にやっていたので』
仁「なんじゃ優真が憎たらしいのう」
『何故ですか?』
仁「...なんでもなか」
『そうですか』
彼が何を考えているのか分かるようでわからない
仁「新入生、どうするんじゃ?」
『?、今考えていました』
仁「それで?」
『早めの対処がいいかと思いまずが、此方から手を出してしまえば向こうの思うツボでしょう』
仁「じゃが、他っておくのもそうじゃないんか?」
『そうですね。それでも、その人達が最初に仕掛けてくれば問題ありません』
仁「流石に校内に凶器は持ってこれんじゃろう」
『その気になれば幾らでも持っていけますよ』
仁「...物騒じゃな」
『そうですね、転校も考えているんですが』
仁「いかせんぜよ」
『言うと思っていたし、優真も高校生になるので止めておきました』
仁「やっぱ憎たらしいナリ」
『何に嫉妬しているんですか?』
仁「...なんでそれが分かって他がわからんのじゃ。お前さんは」
『はい?』
あらかた水分を奪ったタオルは湿っていき
程よい所で手を止めて彼にタオルを返した
仁「氷月。どんなに立場が危なくなっても、俺は絶対にお前さんを裏切らん。覚えておきんしゃい」
『わかりました』