第17章 甘い日
白川側
雪道の歩き方を教えてくれたお礼と
ティラミスのお礼をしたいから夜ご飯を食べろと言われた僕は
寒いので一度風呂の湯に浸かり
髪をしっかりと乾かしてからお隣さんの部屋へ向かった
『お邪魔します』
仁「おう、こっちに来んしゃい」
靴を脱いで端に寄せてから何時ものように中へ入る
仁「今日は寒いからな、鍋料理が食べたかったんじゃ」
『鍋ですか、明日はシチューにしようかな?』
仁「なんじゃ?誘っとんのか?」
『いいですよ。1人のシチューは作りにくいですから』
仁「クク...お前さん、本当に警戒心が強いんか?」
『あなたのその野良猫っぷりも警戒心がお強いのでは?』
仁「言ったのう...、いつかテニスで決着を付けたるき」
『頑張ってくださいね』
鍋の中の野菜を掻き分けて一通りの物を皿の中に入れる
その後、何時ものようにコーヒーを淹れてくれた仁王君は風呂場に向かった
リビングのソファーで湯気が立ってる淹れたてのコーヒーを眺める
今頃になって大河が僕と接触してきたのは大問題だが
今の所はどうでもいいだろう
本当の大問題は来年の1年生に僕を殺そうとする人物が2名存在する事
その人物に覚えがあるとしたら小学生の時の人物だろう
だが、小学校を転向した回数は4回
子供の数は1000人を超えているだろう
そこから声変わりしり顔つきが変わっている可能性は大いにある
見つける事は簡単かもしれないが
それをどうやって対処するかが問題になってくるだろう
暖房の効いた部屋の中で湯気が見えなくなったコーヒーを手に取り
半分くらいまで流し込む
喉を暖かい苦い液体が通り、胃の部分に溜まる感覚が分かる
『はぁ...』
今日、初めての溜息を零して机の上にカップを乗せた
三輝さんには悪い事をしてしまった
何も事情がわからないのに巻き込んでしまった事は深く反省もしている
そして、明日は謝らないといけない
今日は成り行きで解散してしまったからな
微かに聞こえたフローリングの床が軋む音が耳を掠め
殺気も何も感じないような、それでいて悪質な気配が背後に忍び寄っている
仁「何を考えておるんじゃ?」
甘く低く優しい声を耳元で言われ
胸の上には彼の腕が組まれていた
自然と体が熱くなっていくのがわかった瞬間だ