第17章 甘い日
バレンタインデーと言うのはよくわからない
自分の苦手な甘い物が大量に持ち込まれる日でもあるからだ
何時もの鞄とビニール袋を持って朝練へ向かう
昨日に降った大雪のせいで辺り一面真っ白になっている
アリィから貰った真っ黒なマフラーをしっかりと巻いて
マンションから出た
そして、正門へ続く道を歩いていると
「白川くーーん!!!」
「こっちよーー!!」
「キャーーー!!カッコいいーーー!!!」
どうなっているんだ...
正門から大量の女子学生が出て来るではないか
『な、なんなんだ...』
思わず溜息が零れそうになるのを飲み込み
とりあえず、逆走する
「「白川くーーん!!!」」
中には見慣れない制服もある
中学生、高校生、私服の大学生までもが含まれている
なんでなんだよ
そう思いながら細い住宅地へ入り込み大半を剥がす
持っていたビニール袋を庇いながら走るのには疲れた
トボトボ歩いていると見つかる恐れがあるので
走って学校へ向かう
先程と違って静かになる正門
だが
『気配が...5つ?』
学校を取り囲む塀のような壁の裏に5つ以上の気配が感じ取れた
誰かのファンなのだろうな
正門を通ったら襲われるかもしれないと思い塀に上って下を確認する
「白川君、また戻ってくるよね?」
「大丈夫よ、正門にも裏門にも人がいるんだからね」
すぐ足元に居た2人の女子生徒はコソコソと話をしている
上から本人に聞かれているとは到底思わないだろう
とりあえず、塀を降りて外側から玄関に近い所まで気配を殺して歩いて行く
『ここら辺、かな?』
再び辺りを見渡して塀を上る
此処からだと裏門の様子も見れる
そして
『......』
なんと言う事だろうか
10人近くの女子生徒が待ち伏せしているではないか
内心ホッとしながら下を見て
音を立てずに敷地内へ着地
その際にビニール袋への衝撃を簡単に殺しておく
寒い冬でよくも頑張れる事で
...防寒具もしっかり付けてるしね
無事(?)昇降口で靴を履き替える事に成功し屋上へ向かう
降り積もった雪は天然の冷蔵庫になる事を思い出し
家から持ってきたビニール袋を雪の中に隠す
帰りにでも渡せればいいと思っている
誰にも見つからないように廊下を歩き教室へ向かった