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古きパートナー

第16章 明かりが欲しい


『!』

今気づいた

ブレスレットを握って懐かしんでいる場合ではないと

黒い靄は僕の全身を取り囲んでいた

どれだけ手で払ってもその靄は全く晴れる事がなく

むしろドンドンと濃さを増していく

『光っ!...にお、う、君...』

息が完全に出来なくなり地に膝を付ける

足元から黒い鎖が飛び出して足を絡めて行けば

天からも黒い鎖が喉を絞めてそのまま腕を絡めて行く

何もない横の空間からも鎖が出てこればお腹回りや胸の辺りを縛られる

そして

『くっ...!』

その鎖は何処からともなく引っ張られ、なんとも言えない十字の姿にさせられた

身動きも取れずに、首を絞めている鎖で息が出来ない

闇の空気は重く苦しく体の中に入ってくる

鈍い痛みが体中をじわじわといたぶって行く

その痛みが段々気持ち良くなり

闇の中が、居心地よくなっていく

このまま闇の中に溶け込めば誰にも会わなくても済む

この心地よい空間の中に何時までもいたい

体の中の何かが闇で満たされていく

このまま目を閉じれば、楽に、なれる、んだ...

誰も傷つけずに済む、自分も傷つかない

なら、いいだろう

その闇を受け入れて、楽に、なりたい...





仁王側

レ「光!」

仁「うわ、びっくりしたナリ。どうしたんじゃ?」

何時もと様子の違うレインは切羽詰まった声をだし

今にも泣きだしそうな表情を俺に向けてくる

レ「光!陰が死んじゃう!」

仁「!、氷月がか!」

レ「こっちだよ!ちゃんと話すから速く行こう!」

仁「了解ナリ」

レインに手を引っ張られて俺達は走って行く

レ「ごめんね、私が悪いの。陰の闇の中をうろついている時に光から貰ったブレスレットを落としてしまったの」

仁「それと氷月の命の危機はどう繋がっておるんじゃ?」

レ「あのブレスレットは陰の感情を呼び戻すための物であり、陰をこの世界に連れてくる重要な物なの」

仁「そうなのか」

レ「陰の闇は誰よりも深く、誰よりも苦しく、誰よりも冷たいの。一度中に入れば自分を見失い、闇に引きずりこまれるの」

仁「闇の中に引きずり込まれたらどうなるんじゃ?」

レ「陰は二度と帰ってこなくなる。感情は完全に消えて、人形になってしまうの」

仁「!」

レ「自分を捨てる事を望む陰の願いは、この闇の中では格好の餌食よ」
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