第16章 明かりが欲しい
大雪のせいで救急車も来れない状況だと言われ
今は一時しのぎをしておる
このまま体温が戻れば、自然と脈拍も戻ると言っておった
「おにいちゃん...」
悲しく辛そうに言う奈々子ちゃんは今にも泣きだしそうじゃった
母「皆さんは一度部屋に戻られた方が良いわ。奈々子ちゃんもまだ休憩して、ね?」
「おにいちゃんのそばにいちゃダメなの?」
母「奈々子ちゃんもまだ体調が良くないからね、元気になったら来ても良いわよ」
「...わかった」
しょんぼりとした表情で医務室を後にする親子は
部屋の番号をメモ用紙に書いて戻って行った
眠っておる氷月の手を握れば冷たい粘土のような感触が伝わってくる
どれだけ子供を守りたいと...
父「子供だから命を賭けて守ったんだな」
上風「氷月...」
あの日に救えなかったからこそ、今度は自分の命を賭けるなんてな
その日、俺達は1日中氷月から離れる事はなかった
最後に都美子さんを残して俺達は部屋に戻って夜を眠った
白川側
『此処は...?』
起き上がると何時もの空間だった
だが違ったのは周りの見た目だった
光の記憶の球は何処にもなく、記憶の図書館へ通じる道もなかった
代わりに黒い靄が全身を取り囲んでいた
何時もより息苦しい空間に立ち上がり周りをよく見ると
前にレインと来た時よりも黒い靄が濃く感じた
『?、あれ、は?』
濃くなる靄の中に白い小さな光が見えた
目を凝らしてもそれが何かわからない
とりあえず向かってみるか
歩き出した足は重く、息苦しさが増す
視界が揺れて、耳鳴りがした
これ以上、奥に進んではいけないと拒んでいる様子
だけど、今行かなければいけないような気がした
それはなぜかわからないけど、歩調を緩めて進む
白い光がより一層輝いているように見えた
近くまで行けば何故か光は小さくなっていく
『ま、待ってっ!』
走り出し目的の場所に着くと、そこには白色のブレスレットが落ちていた
何時かレインがしていた記憶が何処かにあった
そして、そのブレスレットを見ると
テニスの鞄の中にぶら下げてある物だと知った
『陽、か...』
懐かしい、あの銀色に輝く綺麗な髪は
本当に僕の光である
純粋な笑顔は優しかった