第16章 明かりが欲しい
腕の中で眠ってしまった奈々子ちゃんは規則正しい寝息を立てている
寒さで死んだ訳ではないのでひとまずは安心だ
先ほどから何か出来ないかと考えてみるが何も考えが浮かばず
いつの間にか寒さで体が動かなくなっていた
腕の中で眠る奈々子ちゃんは僕の残っている体温を全て預けているので当分は大丈夫だ
寒くないように背中を摩ってやり
服を掴んでいる両手にはコートの袖を被せてやる
さらに強く抱きしめて体を密着させる
これで僕が本当に男だったらだたの変態だな
奈々子ちゃんを見ていると眠気が襲ってくるが
此処で寝たらきっと最後になる可能性が極めて高いだろう
態勢を変えようと足を動かすと太ももの辺りに妙な違和感があった
それを取り出すと携帯電話だ
寒さで電源が落ちているが、ギリギリ起動させる事が出来た
幸いにも電波は届いているアンテナが全開だ
着信履歴とメールの件数がヤバい数だ
優真から16件、幸村君から4件、柳君から9件
真田君から1件、柳生君から5件、桑原君から3件
切原君から12件、丸井君から10件、仁王君から
『すご...』
仁王君からは20件オーバーだった
メールを1つずつ開いて行くとどれも同じであり
何処にいるのかを訪ねるものだった
皆に心配を掛けてしまったと心の中で謝罪をしていると
ディスプレイが変わり「仁王雅治」からの着信であった
『はい、もしもし』
仁「!、氷月かっ!」
『そうですが?』
仁「氷月に繋がったナリ!」
切羽詰まった仁王君の声が聞こえるとガヤガヤと皆の声が聞こえてきた
父「氷月っ!今何処にいるっ!!」
『詳細はわかりませんが、冷蔵庫か冷凍庫辺りにいます』
父「中かっ!」
『はい』
父「すぐに迎えに行くっ!通話はこのままにしておけ!」
『わかりました』
父「1つ聞くが、そこに「奈々子ちゃん」はいるか?」
『小さな女の子の奈々子ちゃんでしたら』
父「その子は?」
『僕の腕の中で眠っています。脈も息も正常です』
父「よし、わかった。仁王君、絶対に切るなよ!」
仁「わかっとる」
携帯の持ち手が主へと戻りパーカーの懐からイヤホンを取り出して携帯に接続する
携帯を持っている手に力が入らなくなってしまったため
落とす前に対応する