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古きパートナー

第16章 明かりが欲しい


「おにいちゃん、ちが...」

『大丈夫ですよ。それより寒くありませんか?』

「うん、大丈夫だよ」

抜いた針からは血があふれだし

ゆっくりと床に滴って行く

傷口を自分の手で押さえ、そこから血が滴り落ちると

ピチャンと音が反響する

長くは持たないかもしれない

僕は立ち上がって冷蔵庫の出入り口を見に行く

扉の取ってに手を掛け下に下ろすが向こうから鍵が掛かっているので開く事が出来ない

今の体では物力行使も出来ない

鉄の扉を蹴破る事は不可能でも

壁と扉の結合部を破壊する事は少なくとも出来るだろうが

なんせまだ痺れが残る体だ、無理に等しい

どうやら撃ち込まれたのは針の先端に睡眠薬でも塗った物らしいな

見つけたらタダじゃおかない

人が動いていれば一定時間明かりは確保される

問題は服装でもあった

僕は元から寒さが苦手であるために必要以上に防寒対策しているが

奈々子ちゃんの姿はこのホテルの浴衣と上着が一枚

とてもじゃないが耐えられないだろう

先ほどの場所に戻ると奈々子ちゃんは膝を抱えて震えていた

恐怖で、寒さで、身を小さくしていた

『寒いですか?』

「うん...」

ハァ...と白い息を自分の両手に充てて腕を摩ってた

扉の隣にあった温度計は氷点下以上10度未満

どう考えても小さな子供が耐えられる寒さではない

僕は自分の羽織っていた黒いロングコートを脱ぎ

奈々子ちゃんに着せてやった

「おにいちゃん、さむくないの?」

『僕は大丈夫ですから、それよりも凍えてしまうと風邪を引いてしまいますので』

半ば無理やり奈々子ちゃんに着せてやると

「だぼだぼー!」

『そうですね』

喜んで着てくれたが、サイズが完全に合っていない

袖は半分から向こうに中身がなく、下は完全にカーペットの状態だ

僕は自分が座っていた場所に腰を下ろすと奈々子ちゃんが目の前まで来た

僕の胸元の服を両手で強く握ると胸の頭を当てて身を密着させてきた

「おにいちゃんのこーと、あったかいね」

『よかったです』

「おにいちゃんもあったかくなって」

『わかりました』

ズボンに血の付いた手のひらを擦り付けてあらかた取ると

奈々子ちゃんを抱きしめた

温かい

早く対策を取らなければならない

この寒い冷蔵庫で2人で凍死は避けたいからね
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