第16章 明かりが欲しい
白川側
目が覚めると真っ暗な空間の中にいた
『ッ!』
体の感覚は戻っているが脇腹の痛みが眠気を一気に奪っていった
上体を起こすと周りは明るくなり、かなり広い空間と言う事が分かった
此処は、冷蔵庫だ
厨房よりもかなり離れ地下に存在する大きな冷蔵庫
生モノから加工品まで多くの物を取り揃えているために数が多い
大広間のように広くはないが、僕らが寝泊まりしている部屋の2周りくらい大きい感じだ
急に明るくなったのは人外センサーが反応してだろう
壁に背を預けて傷む脇腹を摩って行くと太い針が深々と刺さっていた
このまま抜けば血が出るだろうが
このまま放っておけば鉄の針に冷気が浴びせられ凍傷を起こしてしまう
まあ、それは後に考える事にして問題は
「うぅ...」
この目の前で寝ている奈々子ちゃんだ
「あれ、おにいちゃん?」
『そうですよ』
起き上がった奈々子ちゃんは目尻に涙を溜めながら飛びついてきた
『ッ!』
飛びついてきた拍子に奈々子ちゃんの体が針に当たり
体中に激痛が走った
「おにいちゃん?」
心配そうに顔を覗かせる奈々子ちゃんは少しだけ離れると
表情を真っ青にした
「いたい、よね?」
『はい、痛いですよ』
「わたし、なにかできない?」
『そうですね、目を強く閉じて耳を塞いでください』
「?」
『僕の用事が終わったら肩を叩きますので、それまでは』
「わかった」
言われた通りに奈々子ちゃんは目を強くつむって耳を両手で強く押さえた
『スー...ハー...』
片手で針を掴んでゆっくりと抜いて行く
これが僕に刺さっているから奈々子ちゃんは泣きそうになる
ならばこんな物、抜いてしまえばいい
電撃のように走る激痛に声が零れそうになり、喉の奥で必死に止める
『うっ...!はぁっ...!』
声が奈々子ちゃんに聞こえているのか
頬には一筋の涙が零れ落ち、体をビクビク小刻みに跳ねる
『くっ...!はぁ..はぁ..はぁ...』
カランと金属特有の音を鳴らして全てを抜き終わると
体から力が抜けて止めていた息が荒々しく吐き出される
妙に熱くなる体は痛みから来るものである
奈々子ちゃんの肩に手を置くとすぐに目を見開き飛びついてきた
先ほどのような鋭い痛みは襲ってはこなかったものの
痛みはまだ残っていた