第15章 殺人鬼
仁王側
急に震えだした氷月に俺は手を差し伸べる
『やめろっ!やめてくれっ!!』
差し出した手はペチンと大きな音を立てて氷月に払われた
父「!、優真、布団とビニール紐!」
上風「了解!」
先ほどまでのんびりと過ごして居った誠さんの表情が真剣へと変わり
優真は持ってきた鞄からビニール紐を取り出す
そしてそのまま上布団を裏返した
上風「準備完了!」
父「氷月!」
『!』
ビクッと震えた体からはすぐに力が抜けた
だが、よろよろと立ちあがった
目は虚ろで前が見えてるのか分からず
最初に見た時よりも冷たい無表情をしておる
父「さあ、掛かってきな」
『僕は、帰る。お家に、帰る』
父「此処からじゃ遠い」
『遠くないよ。だって、死ぬんだもん』
「「!!」」
父「なんで死のうとする?」
『僕が沢山の人を殺したから」
父「何のために?」
『僕と同じような子供達を守るために』
何を言っておるんじゃ...
父「氷月」
『僕はファースト。そんな名前は知らない』
ファースト...、何時かデパートで大男が言っておったな
父「お前の名前は白川氷月だ」
『僕はファースト。子供達を守るために戦う』
父「もう戦わなくてもいいんだ」
『何故?』
父「お前は解放された。あの空間から、あの男達から」
『僕は殺人鬼。人を殺める前に、自分を殺す』
仁「!、氷月っ!」
急に走り出し廊下の扉へと進んでいく
丸「ただい...なっ!」
タイミングよく帰ってきたブンちゃんと派手にぶつかった
ブンちゃんの上に氷月が乗っておった
父「捕まえろ!」
丸「え、あ、逃げんな!氷月!」
そのままブンちゃんは氷月を強く抱きしめておった
...なんか腹が立つナリ
『嫌だっ!戻りたくないっ!父さん!母さん!』
悲痛に叫ぶ氷月の表情は苦しそうで涙が頬を伝っておった
父「すまんな。頼りない両親で」
誠さんは氷月の後頭部を強く殴り
その場で気絶させた
糸の切れたマリオネットのようにぐったりとする氷月
丸「?、なんだこれ?」
今だに状況の追いついておらんブンちゃんは置いてけぼりじゃ