第13章 テニス
黄色いボールをラケットで打ち返す
ただそれだけの事なのに
打ち返せるのが楽しくて
相手からポイントが取れると嬉しくて
逆に取られると悔しくて
次はとやる気が出て強くなりたいと思って
...負けたくないから強くなりたくて
勝てば守れる、負ければ...負ければ......
柳生「氷月さん」
『!、柳生君』
テニスコートと外を区切るフェンスを無意識のうち握っていた
柳生「何を考えていたかはわかりますが、まずは肩の力を抜いてください」
『...はい』
肩に置かれた柳生君の手は暖かい
フェンスから手を離しコートの中を見つめる
中では桑原君と仁王君の珍しいシングルスをしている
柳生「今の氷月さんでは切原君でも何を考えているのかわかりますよ」
『それほどまでに顔に出ていたと言う事ですか?』
柳生「いえ、行動です」
『......』
柳生「言い方は悪いですが、終わった事です。今のあなたは誰にも縛られていません」
『だからと言って何を縛られていません』
柳生「そうですね。あなたは過去に縛られ過ぎています。大きく細かく絡まっています。その紐を断ち切るのはかなり難しいでしょう」
『......』
柳生「此処は中学とは違います。あなたの理解者が多く居る場所です。アリィさんも空で喜んでいるでしょう」
『だと良いのですが』
柳生「では、あなたは何をお考えに?」
『アリィが死んだのは僕のせい。テニスをしたりないアリィは僕を恨んでいると思います』
?「それはないぜよ」
柳生「仁王君」
顔を上げて前を見れば真剣な目で僕を見る仁王君が立っている
試合も終わりこちらに近づいてくる
仁「アリィがそんな事を考えておったらプレゼントなんてよこさんし、球も返してくれんかったじゃろう」
『......』
仁「...何が怖いんじゃ?何に怯えておるんじゃ?」
『別に、僕は...』
仁「感情的になってもええんじゃよ。アリィも俺達も責めておらん」
『......』
仁「黙っておったらわからんナリ」
柳生「仁王君、言いすぎです」
『それでも僕は、こんな無力な自分が大嫌いです』
逃げるようにその場を去った
休憩時間も迫ってたから、その理由で逃げ出した
胸の中がチクチクとしており、胸苦しさを感じる
苦しい、苦しい、苦しい