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古きパートナー

第13章 テニス


夕食を済ませてリビングで1人ソファーに座る

最近はよく仁王君が隣に座ってくれているせか

何処か寂しさを感じてしまう、気のせいか

私服から外に出る準備をする

テニスの壁打ちをしに行くだけだ

あの高架下なら雨も雪も入ってこないので便利な場所である

分厚い黒のパーカーとモコモコの黒いズボン

別に犯罪を犯すわけではない

ウィンドブレーカーをその上から羽織る

少し動きにくいが寒いよりはましだろ

「「ニャー」」

『あ、いってきます』

風邪で寝込んだ時から家にいる子猫を策の中に入れて部屋を出る

白い雪が降る中、高架下に行くために足を速める

走ると疲れるし、早歩きなら多少大丈夫だ






『寒い...』

ラケットを手に持ち壁にひたすら打ち続ける

街灯の明かり明けで高架下で壁打ちなんてのは普通の人じゃ出来ない

夜目はかなり効くので黄色いボールはよく見える

聞こえるのは川のせせらぎ

ボールがラケットに当たるインパクト音

壁に当たるボールの音

かれこれ30分はやっている

〈なんでお前なんかにコーチは構ったんだろうな?〉

そんな事は知らない

〈俺達の方が経験者なのに〉

やっている年なんて関係ない

〈なんで優勝できなんだよ!〉

僕よりも上の存在なんて沢山いるだろ

体はテニスを楽しんでいる、心もテニスを楽しんでいる

なのに、僕の思考はテニススクールの時の嫌味が渦巻く

『ッ!』

それを思い出す自分に腹が立ち、左手で最大限までスピンを掛ける

壁に当たったボールは壁に張り付くようにその場でスピンする

回転が無くなるとそのまま壁に沿って落ちていく

不意に来る浮遊感、地面はあるのに

足元がグラリと揺れ両膝を地面にぶつける、前に

?「何しとんじゃ?」

『...仁王君』

前から抱かれるような感じで受け止めて貰った

足に力が入らない

この不思議な浮遊感に捕らわれた時、暫く足は使い物にならない

そのまま仁王君は壁の所まで運んでくれた

壁に背を預けて一息つく

目の前には心配な表情をした仁王君がしゃがんでいた

『ありがとうございました』

仁「......」

何も言わないまま仁王君は僕を見ている

手を伸ばし、僕の伸びきっている足を撫でる

仁「...いつもこんなんか?」

『はい』

苦しそうに言う彼に申し訳ない気分だ
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