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古きパートナー

第10章 知らないフリ


何も考えなしで歩いている僕の後ろには仁王君がいた

勿論そのはずだ住んでいる所は同じだし帰り道も一緒だ

これは時間差を置いて帰らなければ

近くに本屋を見つけてそこへ入ろうとする

仁「何処に行くんじゃ?」

『本屋です』

仁「今から降るんじゃぞ?」

『帰りは反対なので』

仁「......」

『それではお気をつけて』

本屋の入口で分かれれば仁王君は渋々と帰路へ立った

じっくりと本屋に居座り立ち読みをしていると雨が本降りに入った

大粒の雨は次第に強くなり、辺りは白い

分厚い雲のせいでいつもより暗くなり

僕の心には不安が渦巻いていた

あの日と似ているから

あの日も夕方に雨が降った、強かった、冷たかった、寒かった

あの時は冬だったから寒いのは辺りまえか

本を閉じて店から飛び出しマンションへ向かう

案の定、びしょ濡れになってしまった

キーを通して自分の階に向かい扉を開ける

『......』

空気が違う

いつもと空気が違う

何が違うと言われれば回答に困ってしまうが

直感で分かる、この部屋には誰かが潜んでいる

気配を殺して何処かに隠れている

優真ではない

彼にそんな高等技術は使えない

では、一体誰が

ベランダのカーテンが揺れれば窓を閉めていない事に気づく

おかしい、朝はしっかりと閉まっていたはずだ

取りあえずテニスバックをいつもの場所にしまいリビングに上がる

濡れた靴下を脱いで辺りを見る

感覚を研ぎ澄ましながら洗面所に向かい

濡れた靴下を洗濯機へ投げ込んで出ると

『?』

見た事のある靴が一足、傘立ての後ろに隠されていた

『これは...』

リビングの入り口で立ち止まる、そして

『仁王君、靴を隠してまで勝手に部屋へと上がらないでください』

少し大きな声で言う

明かりのない暗い部屋を見渡す

仁「...なんじゃ、バレておったんか」

台所の方から人影が動いたのを確認してから明かりをつけた

私服に着替えている仁王君は悪戯な笑みを浮かべてこちらへと近づいてくる

仁「では俺も聞こうかのう、此処で何をしとるんじゃ?影夜」

『わかって聞いているのですか?』

仁「そうじゃのう...」

彼が私だと知ったのは恐らく先程の寄り道だろう

それまでは薄々と気づいていたはずだ

被っていたフードを取った
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