第6章 不思議体験
仁王側
襖の閉まる音がした
起きて布団を見渡すと白川の姿だけがない
仁「......朝食か」
俺は立ち上がって台所に向かった
台所に立って味噌汁の用意をしておる
仁「お前さん早いのう」
白川は振り返った
『仁王君ですか』
!
振り返ったモーションが誰かと被った
あの時の女の子と
『どうしたのですか、仁王君』
仁「まだ、寝ぼてるんじゃ」
『優真みたいですね』
そう言うと白川は朝食を作り始めた
じゃけど
仁「なんか、あったんか?」
いつもよりも表情が暗いように見える
無表情ではそこら辺は最近わかるようになってきた
『なぜ、そう思うのですか?』
朝食の準備は手放さない
仁「なんとなくはいかんか?」
『では僕も答える事はないでしょう』
確かに最初に比べるとかなり信用してもらっておる
じゃが、なんとなく壁がある
乗り越えてはいけない、叩き壊してはいけない
そんな気がするんじゃ
仁「お前さんは自分に不都合な事、嫌な事があると声のトーンが少しだけ下がるんじゃよ」
『......』
これは、ここ何日かでわかった事だ
これは三強と紳士も知っとる事
『はぁ、そこは盲点でした』
と言いながらボールに卵を割る
出汁巻き卵じゃな
『嫌な夢を見ただけです。自分のある記憶の中で最も最悪な夢です』
そう言うと、卵を焼き始めた
仁「それは、中学の」
『はい』
優真から聞いた
仲の良かった友達が飛び降りをしたと
仁「すまんかったな、聞いて」
『問いに対する答えは必ずしないといけませんから』
こいつはどこまで超人なんじゃ
仁「お前さん、テニスはしんのか?」
『しません』
かなり口調が強かったぞ
しかも即答じゃった
仁「どうしてもか?」
『僕がやるのはマネージャーまでです。それより上はやりません』
仁「そうか」
俺は洗面所に向かった
あれは俺の少し思い出した陰とは違う
でも、陰ではない気はしない
そんな事を思った
(うp主はテニスするんか?)
(ソフトテニスはするぞ)
(強いか?)
(サーブとスマッシュだけ)
(勝負にならんぜよ)
(ほっとけ)