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日常に染まる非日常【デュラララ】

第3章 「動き出す歯車」


少女が他所(よそ)を向いている隙に、警棒を持った男は勢いよく彼女にそれを振るった。
しかしそれは彼女に当たることはなく、当たる寸前で彼女自身の手によって止められていた。
「あ……。ごめんなさい、加減が……」
少女の手の中に収まっていた警棒は、棒が折れる時と同じような音を立てて折れ、その破片が地面へ落ちていった。
「なっ……」
「格闘系の部活でもやってたか?」
粉々になった警棒を見て男たちの中で余裕が消え、次第に恐怖の感情が芽生え始める。
そんな男たちとは対照的に、右側にいる男が冷静な口調で問い掛ける。
少女が、影のように“曖昧な存在”ではないということだけが彼の冷静さを保つ要(かなめ)となっていた。
その目に怯えはないが、余裕も見受けられない。
「ガっさんっ……」
その様子を見て近くにいた男は、縋(すが)るように彼の名を呼んだ。
ガっさんと呼ばれた男は懐から大型のナイフを取り出すと、そのままゆっくりと少女の方へと近づいた。
「何かじってんのかは知らねんが……まあ、刺せば死ぬだろ。……ちと可哀想だがな」
「…………」
「あ、あの……?」
影はそれを見て、少女を守るかのように彼女の前に出た。
少女はそれを心配そうに見て、間から近づいてくる男の様子を伺った。
「何だ? そのお嬢ちゃんは関係ねえってか?」
リーダー格の男は、絶えることのない違和感に歯ぎしりをしながらもそう問う。
そんな問いかけにも答えず、影は無言のまま静かにリーダー格の男の方へ向き直る。
そして──ソレは、次の瞬間に明確な形となって男の視界に現れた。
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