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日常に染まる非日常【デュラララ】

第3章 「動き出す歯車」


 何かの打撲音がして、青年の体は歪んだ弧を描いて半回転した。
少女は驚き、横向きになったまま体を地面に打ち付け悶える青年を見る。
そして少女は彼に迫る黒いソレへと目を移した。
“影”としか言い様のないソレは、黒いライダースーツを身に纏い真っ黒なその身体は駐車場の蛍光灯の光を反射させ、その存在を認識させていた。
そして首から上には奇妙なデザインをしたヘルメットがつけられており、其処だけがその身体の“漆黒の世界”から離れた場所だった。
ソレは少女の存在には気づかず、無言で青年を一瞥(いちべつ)していた。
「な、何とか言えよ! 一体何なんだよ手前(てめえ)は!」
 青年から見れば、それは全くわけが分からない存在であり、それ故に恐怖の対象でもあった。
其処に居る二人に気づかれていない少女もまた、彼同様その存在を理解できていなかった。
しかし彼女は青年の様な恐怖はなく、ただその影に対する興味だけが彼女の鼓動を速める唯一の原因だった。
 影は再び動き、青年を持ち上げてそばに置かれた漆黒のバイクに跨がった。
少女はそれを見て慌てて立ち上がり、上手く影の死角になる場所に移動して観察する。
彼女はその様子を見て、改めてその存在に違和感を感じていた。
影の跨がったバイクは運転手と同じく漆黒に包まれており、本来ならばナンバーが刻まれてある筈のプレートすら真っ黒に染まっていた。
そしてソレは、音もなくその場を去っていった。
普通ならば聞こえ、そして駐車場の中で響き渡るはずのエンジン音が全く聞こえなかったのだ。
「…………」
少女は自分の目でしっかりと捉えたその事実に、未だ疑問を持っていた。
我に帰ると少女は急いでその場を離れ、バイクの向かって行った方へと走り出す。
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