第14章 媚薬
~帰り道~
私はカエデと一緒にカエデの家へと向かった。
「ねぇののちゃん」
「ん?」
カエデはひょこっと体を乗り出して言った。
「カルマくんと一緒じゃなくていいの?」
「うん、今日はカエデと話があるからって言ったから」
「それでOKだったの?」
「え?」
カエデは苦い顔をして眉をひそめた。
「だってカルマくんって欲しいものは力づくでも取るって感じするから…『俺もついてくる』とか言いそうだなって思ったの」
(カルマくんそんなイメージ持たれてたの…)
私はできるだけいいイメージになるようにしようと言葉を選んだ。
「カルマくんはそんな人じゃないよ。だって一昨日、私が泣いてるの見たとき自分のせいだって謝ってくれたもん」
「え、なんで泣いたの…?」
「…よく覚えてないけど、悲しかったんだと思う。たまたまカルマくんに帰り道に会って、カルマ君の姿見たらなんか泣けてきちゃって…」
「…そっか」
「うん…」
二人の間に沈黙が訪れた。
(…カエデなら…きっと受け止めてくれるよね…)
私はそう思い、大きく息を吸った。
「カエデ」
カエデは眉をピクリと動かし、「ん?」と首をこちらに傾けた。
「これからカエデの家で話す内容…カルマくんのことだけじゃないんだ…」
「?」
私は震え交じりの声で言った。
「…家の…家庭のこと」
カエデは進めていた足をピタリと止めた。
「…そっか」
カエデはそう言うとまた足を進めた。
そしてまた二人の間に沈黙が訪れる。
私はカエデの家に着いたら話す。
カルマくんのこと。
親のこと。
全て、話す。
私はカエデの家に近づくにつれ、体が震えてくるのを感じた。
もしも、カエデが私を裏切ったりしたら?
私の心の傷口を引き裂くようなことを言われたら?
でも、そんな不安はカエデの後姿を見た瞬間、収まった。
カエデに背中は『大丈夫だよ』と言っているかのようだった。
(大丈夫…カエデを信じよう…)
私は歩幅を少し広げて足を進めた。