第42章 諸刃の刃の切っ先で
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満腹感によるものか、疲労感によるものか。
おそらくその両方だったろうが、私はすっかりひと眠りしてしまっていた。
知らないうちに客間のベッドに寝ていた始末である。
多分、自分の足でベッドに寝転んだ気がする……けど……。
まさか、ここまで運んでもらうような迷惑をかけていないだろうか。
心配になり、私は体を起こした。
まだ寝ぼけ眼だったが、こそこそと人の話し声がすることに気づく。
「こんなファイル、僕も今知りましたよ」
「ライヴィスが最後にさわったのは、えっと、2時間くらい前か」
「でも、急にダウンロードされたんじゃないんです。最初のファイルに入っていたようなんですが、設定時刻になると自動解凍されるようになってたみたいで」
「隠しファイルか……やっぱり公子ちゃんと関係が……?」
ライヴィスとトーリスの声だった。
声のトーンは抑えめだが、両者ともに困惑が滲んでいる。
穏やかではない雰囲気だった。
「エドはなんて?」
「公子さんを起こしてきてほしいと……」
声がゆっくりと近づいてくる。
私がいる部屋に向かっているらしい。
今さら寝たフリもできず、私は扉を開けた二人とちょうど目があった。
「あっ……」
「お、おはようございます……」
盗み聞きするつもりはなかったのだが、結果的にちょっとそうなってしまった。
そんな気まずさもあって、苦笑いのような変な笑顔で出迎えてしまう。
「お疲れのところすみません」
「い、いえいえ! 居眠りしてしまってすみません! 私を呼びに来たとか?」
トーリスが頷く。
ライヴィスはどことなく不安げな面持ちだった。
そういえば、今は何時なのだろう。
地下というのは時間感覚を奪う。
窓がひとつも見当たらないって、こんなに窮屈で、ちょっと怖いんだ……。